超新星「SN2016C」の発見事情
2016.1.12
青木昌勝
人工光の少ない暗い夜空で星を観測するため、2013年に岐阜県高山市に口径50㎝の反射望遠鏡を設置した。
正式名称は「奥飛騨天体観測所」(OkuhidaObservatory)
奥飛騨天体観測所 ERDEFR500
富山の自宅から操作できるよう遠隔コントロールシステムを開発し設置。また、超新星捜索のためのフルオートの自動撮影システムも2014年に完成。
以降、自宅から天文台の望遠鏡や撮影機材を遠隔コントロールし、主に超新星捜索のための比較画像となる銀河の撮影に取り組んでいる。
1996年~2000年にかけては富山市月岡町の「きものブティックあおき」の店舗屋上に設置してある望遠鏡で12個の超新星と2個の小惑星を発見。 日本天文学会や東亜天文学会より新天体発見賞を、1998年には富山県功労賞を受賞。
≪超新星の発見≫
2016年1月4日の朝、ネットで奥飛騨天体観測所につないで昨夜自動撮影された画像をチェックしていたところ、午前5時10分ごろに撮影されたおとめ座にあるNGC5247という銀河の画像に15.7等の恒星像を発見した。
リアルタイムでの捜索であれば、そのような天体を見つけるとその場で複数の画像を撮影し再確認するのだが、その日は無人での自動撮影だったので1カットの画像だけであった。
通常、1枚だけの画像で発見報告することは控えるのだが、ノイズとは違うしっかりとした恒星像であったことと、すでに発見済みの超新星や移動天体(小惑星や彗星)ではないことがはっきりしたため、これまでの経験から超新星の可能性が極めて高いと考え、位置測定と等級測定を終えIAU(国際天文学連合)の超新星webサイトに報告した。
新天体の発見報告は慎重かつスピーディーに行う必要がある。報告が遅れて海外で先に発見報告されてしまうことや重要な研究対象であった場合一刻も早く大きな望遠鏡で観測する必要があるからである。
IAUの超新星webサイトでこの発見報告を見たインドの天文台が1月7日(UT)夜、口径2mの望遠鏡でこの天体のスペクトル観測を行った。 また、広島大学宇宙科学センターの口径1.5m望遠鏡でも4日と6日(UT)にスペクトル観測が行われ、ⅡP型の超新星であることがわかった。
その結果からIAUの超新星webサイトで正式に超新星「SN2016C」の符号が付けられ公表された。
超新星発見画像 出現前の画像
自身2000年に発見して以来16年ぶり13個目の超新星発見である。
≪DATA≫
・超新星符号:SN2016C
・発見日時:2016.1.4 5:10:15(JST) 2016.01. 03.84045(UT)
・発見場所:岐阜県高山市
・銀河:NGC5247(おとめ座)
・超新星の座標:赤経13h38m 05.30s
赤緯-17°51′15.30″
・offset:E31″N108″
・等級: 15.7等
・望遠鏡:口径50㎝f/5.6反射望遠鏡(焦点距離2,800㎜)
・CCD:FLI PL_1001
※青木昌勝の超新星ホームページ「http://www.aoki-supernova.jp/ 」
※IAUの超新星webサイト「http://wis-tns.weizmann.ac.il//search」(本年1月1日から運用)
以 上
富山市布市新町121
青木昌勝
E-mail:aoki@aoki-erde.jp